キッコーマンがインドでなぜか中華料理協会立ち上げについて
今回は調味料大手キッコーマンがインドでなぜか中華料理協会を立ち上げたという報道がありましたので、これについて思うところを述べさせていただきたいと思います。
キッコーマンが設立した団体は「Kikkoman Centre for Chinese Cuisine(KCC)」。2025年11月に正式発表したそうです。ビジョンは「本場中華とグローバルに展開される様々な中華に学び、インドにおける中華料理の発展に寄与する」というもので情報発信と啓発、人材の発掘・育成、そしてインドにおける中華料理の品質向上を三本柱に据えるとのこと。
しかし醤油のキッコーマンが立ち上げるなら日本料理協会なら自然ですが、中華とはちょっと首を傾げてしまいます。ですが、そこにこそ同社の戦略的な深みがあるようです。KCC設立の背景には、「インド・チャイニーズ(インド中華)」という独自の食文化があり、その起源は意外にも古く、18世紀後半にさかのぼるそうです。中国からコルカタ(旧カルカッタ)に移住した人々が持ち込んだ中華料理の技法を、現地の食材やスパイスと融合させたのが始まりだそうで、インドにおけるそのすそ野は相当に広いそうです。これに対してインドにおける日本食レストランの数は極めて限られており「キッコーマン=寿司・刺身の醤油」というイメージに縛られてしまえば、マーケットは極小の部屋に閉じ込められてしまい、大きく広がりようがないことになります。 一方、インド中華は全土に浸透した巨大市場で醤油はその調理に日常的に使われる不可欠な調味料です。自社の商品を「正しく」売り込むのではなく、現地で最も大きな機会がどこにあるかを見極め、そこに自らを位置づけ直すという戦略的な発想の転換こそが重要だったのだと思います。
この自社製品を「正しく」売り込むのではなく、現地の需要や特性に応じて良い形で売るという発想は、私たちが新市場開拓を図るときに役立ってくれるのではないかと思います。