コロナ禍の追い風もあってリモートワークが普及してきたのにつれてビデオ会議、チャットなどに関する各種のサービスも活況を呈しています。その中でも大きく飛躍したサービスとしてZoomが上げられるかと思いますが、好調な同サービスの先行きについて少々不穏な動きがあるようです。
 音楽用電子機器を販売するズーム(東京都千代田区)が9月17日、米Zoom Video Communications(ZVC)のWeb会議システム「Zoom」が同社の登録商標を侵害しているとして、日本でZoomを提供しているNEC子会社のNECネッツエスアイに対して侵害行為の差し止めを求める訴訟を、東京地方裁判所に提起したと発表したのです。ズーム社は恥ずかしながら私は知らなかったのですが、音楽用電子機器では歴史と伝統のあるブランドで、ZVC社よりももちろん歴史のある会社だそうです。2019年頃からWeb会議システムのZoomに関する電話等での同社への問い合わせが多発して業務に問題をきたし、また同社の株価の乱高下にも影響を与えているということで同社はZVC社と話し合いをしたものの誠意のある対応は得られなかったとして提訴に踏み切ったようです。ズーム社の提訴は「電子計算機用プログラム」を含む商標登録(4940899)(2006年の登録です)に基づく権利行使と思われ、これに対してZVC社はWeb会議システムに関する商標は登録していますが、電子計算機用プログラムを含む商標登録については、出願はしているもののズーム社の先願を理由に拒絶されています。
 これからするとZVC社とその日本での代理店であるNECネッツエスアイ社側は旗色が悪いようで、電子計算機用プログラムの仕様を含む商標としてのZoomは認められなくなる可能性があります。とは言えWeb会議システムとしてのZoomの商標は有効なので、アプリとしてのZoomの名称の変更を余儀なくされるといった展開が想定しうるかもしれません。
 その場合にしてもZVC社としては痛い損害でしょう。商標とは一つ間違うと実に怖いもの。特に一般的な名詞に近いものだとどこで侵害しているかわかりません。皆様も自分の会社の商品やサービスに使用している商標がどういう権利を担保しているのか、どっかで他社の侵害をしている恐れはないか一度確認してみてはいかがでしょうか。
 

  古瀬行政書士事務所の会社設立御相談ページへ